転職の内定をもらうまでの話はよくあるが、忘れてはいけないのは、転職をして仕事を始めてから。
転職活動は数ヶ月だが、転職先の会社での仕事はそれよりも更に多くの時間を費やす。

同じ会社に長くいるメリットとして、周りの人たちからの信用が蓄積され、何か頼んだらやってくれるという「信用取引」ができるようになるが、デメリットとしては、思考回路や行動パターンが固定化する。
新しいチャレンジを新しい環境でやっていかないと、思考も行動もなかなか変わらない。自らの意思で自分を進化・成長させていくには、自分自身で変化を作っていく必要があり、その有効な選択肢として転職がある。

▪️ 転職先を決める判断
・中小・ベンチャー企業:社長やその会社の人たちと一緒に働きたいか。(事業内容が変化する可能性があるため)
・大企業:その会社が作っている商品やサービスに興味があるか。(人数が多いので、その人たちと一緒に働けるわけではないため)


本書は、転職後のスムーズな活動を行うための指南書になると思います。




▪️ 転職先で苦労する人
・頭が固くて権利意識の強い人
  ⇒ 細かいところにいろいろこだわりや思い込みがあり、条件面にうるさい人
・アドバイスを素直に受け入れず、頑固だと感じられる人

違う環境に入るということは、そこに自分を合わせないとうまくいかない。
転職して新しい組織に入る人は、ジョハリの窓(「自分も他人も知っている自分」の領域をどんどん広げていくと、相互理解とよいチームワークの構築に繋がっていく、というコミュニケーションのモデル)の考え方を知っておくと非常に役立つ。


<参考情報>
・Wikipedia
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/ジョハリの窓
・ジョハリの窓で自己分析
https://potect-a.com/utilization/johari_window/


▪️ 活躍している人に共通している要素
・明るくて前向きで元気があること。


▪️ 転職確定直後 〜 最初の1週間までの心づもり
あなたは、特別な存在ではない。

1. 転職が決まったその日から、あなたは “1/社員数” の存在になる。
2. 初日のランチは1人で食べるかもしれないと考えておく。
3. 上司に頼んででも、世話役を任命してもらう。
4. 会社の変革を任せるといった人事の過剰な期待は、しばらく心の中にしまっておく。
5. 必ずしもみんなから歓迎されているわけではない。あなたのために出世が遅れる人もいる。
6. 自己紹介は明るく元気にハキハキと会社と仕事への愛を語る。尚且つ、自分のセールスポイントを明らかにする。
  <自己紹介内容のポイント>
  ① 過去のビジネス履歴と自分が得意とすること
  ② この会社ではこういう分野で貢献できる(と思う)
  ③ 出身地、趣味など、パーソナルデータ
7. 「使いたい」と上司を思ってもらうために、自分の1分間CMをつくる。
  <自分が今できることは何か伝える時のポイント>
  ① 何ができるのか(効能)
  ② 何をやってきたか(実績)
  ③ どんな状況の下で成果が出るか(適用例)
8. 服装は「うち」を「そと」を分けるバロメータ。まずは周囲に溶け込む努力をする。
9. 同僚となる社員の名前は、事前にインプットしておく。
10. 転職先の呼称(◯◯課長、◯◯さん、◯◯ディレクター)に合わせて呼ぶ。
11. 得意分野を積極的にアピールし、前職イメージから自分イメージへ転換させる。
12. 仕事内容が事前の話と異なる場合は、以下の3つの選択肢から選ぶ。

  ① 会社に掛け合って、約束通りの仕事にしてもらうように働きかける。
  ② 自分のやりたいことをするために、すぐに転職活動を始める。
  ③ チャンスと捉え、予定外の仕事にチャレンジしてみる。
13. 外出先ボードの名前順番は気にしない。順番を上げたければ、成果を出すしかない。
14. 宴会芸の一つは用意し、説教魔にも我慢して付き合うくらいの覚悟を持つ。



▪️ 入社1週間 〜 入社1ヶ月までの仕事の仕方
熱心な学習者だけが生き残る。

1. 上司・同僚のバックグラウンドを探って親近感を覚えてもらい、社内の人脈を築く。
2. 役職の序列や世代を超えたインフォーマル・コミュニケーション(縦横斜めの人間関係)を築く。
3. 飲み会は、“情報収集の場” として捉える。
4. 中途同期のネットワークは重要だが、100%の信頼は置かない。
5. 「親切な人」は、必ずしも「できる人」ではない。
6. 同報メール(社内の行事やイベントのお知らせ)を送信する人は、社内に広くネットワークを持っている可能性がある。不明点を見付けて質問し、「頼りになる人」を探す。

  ※ 使えるのは、せいぜい3ヶ月目くらいまで。
7. 近くにメンター(ベテランで面倒見がよく、上からも下からも信望が厚い人)を見つけ、相談できる環境をつくる。
  ※ 1ヶ月以内を目処に、見つける。
8. 「今さら聞くに聞けない」こと(一般常識として当然知っているはず、とされているような言葉や話)は、自分で調べ、次の機会では使いこなせるようにしておく。
9. 会社や業界には特有の言葉や略語・言い回しが存在するため、耳にしたら即時メモを取り、議事録やメール文章も確認して、それをもとに社内用語集をつくる。
10. グループウェアは会社の雰囲気を如実に表しているので、隅々までチェックして使用法(文書の内容や書き方、どこに何があるか、の理解)に習熟する。
11. 業務フロー図を自ら手で書き、業務の全体像を把握する。

  ※ どのタイミングで何をしなければならないか、前段階の作業が後段階でどのような効果を発揮するか、理解できる。
12. 会社の重要な数字を把握し、経営の意思決定を軸を理解する。
  ※ 過去5年程度の売上・経常利益推移、顧客ごとの売上構成比、地域ごとの売上構成比、投資総額と投資の中身の大枠、コストの構造、限界利益率と損益分岐点。店舗を運営しているようであれば、モデル店舗(都心と郊外など)ごとのイニシャル投資額、売上、コストの構造、利益率など。
13. 会社の成長記録である社史を読み、会社の歴史を知ること。
  ① 会社の人、特に上司との共通項ができるから。
  ② 仕事を進める指針(会社が何を一番に優先し、どういうことに最も価値を置いているか、逆にタブーは何か)となるから。
14. 会議の席順、発言にもその会社のローカルルールが存在する。「〜すべき」などの言葉遣いにも注意する。
  ※ 話の中に「前の会社では」との一言は入れない。非難されているように周りは受け取る。
15. 提出資料の書き方に習熟すること。特に、数字の表記については注意。
  ※ 提出資料については、まず自分のやり方でつくって、それをメンターに修正してもらい、その修正点を覚えるといった流れを、転職1〜2ヶ月は続ける。
16. 違和感を持ったことは、口に出さずにメモを取ること。(違和感メモ)
  ※ 「何について、どんなところに違和感を持ったのか、なぜそう感じたのか」まで詳しく書き留める。


▪️ 入社1ヶ月 〜 入社3ヶ月まで
大きな成果を狙うな!小さな実績を積み上げよ。

1. 転職後の緊張感の中で1ヶ月を過ごし、疲れはピークになっている。体力と精神力の健康レベルを回復させることを心がける。
2. 人事部を味方ではない。面談で話したことは上司に筒抜けになる。

  ※ 部署内の問題や転職者の状況について、人事部に解決する力はない。
3. ストレスがピークになり、前の会社への郷愁が湧き上がるが、新しい会社で生きて行くしかないので諦めること。
  ※ 愚痴や不満、悩み事は仕事とは無関係の友人に話した方がよい。
4. 意識的に「ウチの会社」と言い、社内用語も積極的に使うこと。
  ※ 周囲との距離感がだいぶ薄れ、身内的な感情を抱いてもらえる。
5. 社内のパワーバランスを把握し、新しい組織の “泳ぎ方” を理解するため、人物相関図を描くこと。
  ※ 主人公は社長(大きな会社では、部長や事業部長にした方がよい)とし、その脇役 / 腹に一物持っているものは誰? / 誰と誰が通じている? / 誰と誰が反目している? / 誰は誰のライバルなのか ・・・などの関係図を描く。
  ※ 入社年次や肩書き・関係状況を書き入れ、一目で分かるようにすること。
6. お客様の下調べやミーティングの予習など、地道に努力をして小さな実績をたくさん積み上げ、「真面目で一生懸命やる」という評価を得ること。
  ※ 何か頼みごとをしたときに二つ返事で助けてくれるほど、信頼感を勝ち得ている人はそれほどいない。大きな成果を狙い、派手なことをしようと動き回ると、周囲の反発を買い、会社内で孤立して行くことになりかねない。
7. まずは自分のセクションで成果をあげること。
  ※ 外部から新しく入った人には、会社の考え方の間違いや矛盾、弱点などが目立って見えるが、決して「会社を変えてやる!」などとは考えないこと。
8. 相手が求めているものは何かをきちんと把握し、それに沿ったアウトプットイメージを固めてから仕事にかかること。
  ※ せっかくがんばっても、相手の要求に応えられないなら、何もしないのと同じ。上司に何か指示されたら、どの程度のものを求めているのか、どれくらい時間を与えられているのかを最初に確かめることが肝心である。
9. 周囲の人間はすべて “クライアント” だと思って行動すること。信頼を得るのには最低半年はかかる。
10. すべては周囲のサポートがあってこと働ける。感謝の気持ち&素直な態度を忘れないこと。
  ※ 失敗をしたら素直に謝り、何がどう間違っているのか、どうすればいいのかアドバイスを請うことが必要。


▪️ 入社3ヶ月 〜 入社半年まで
若葉マークの時代。

1. 周囲と自分を差別化できるような部分を打ち出していき、自分のポジションを確保すること。
  ※ 慣れてきたことに安住せず、会社の中で欠けている部分を補うような、なおかつ先輩や同僚に比べて自分に比較優位性のある仕事を進めて行く。
2. 引き続き、小さな成果の積み重ねを意識し、意見や提案は慎重に行い、否定するのではなく別の選択肢を提示すること。
  ※ 会社への批判や意見は、「違和感メモ」に引き続き、書き留めて行く。
3. 同僚からは依然として “外部の人“ と思われている可能性が高いため、クライアントだと思い続けること。
4. 社内の人の言葉の引用は慎重に使うこと。人間関係を知らないと全てが水の泡になる。
5. 社内のタブーに触れたとしても、自分の良心にしたがって行動せよ。

  ※ 暗黙のルールを破ったがために犯人に仕立て上げられて叱責されたなら、それは転職先選びを間違えたという可能性が高い。合理性の乏しい暗黙のルールが多くあり、しかも会社として変えようと考えていないのなら、その会社に将来性があるとは思えない。
6. セクショナリズム(縄張り争い)に巻き込まれたら、メンター・上司に頼り、対応策を学ぶこと。
7. その会社が持つ時間と空間の正しい感覚を持てば、その会社が理解できるようになる。

  ※ 時間感:仕事のテンポや片付けるスピード、どのくらいで結果を出さなければならないか。
  ※ 空間感:自分たちの影響力の及ぶ範囲をどのくらいと認識しているか。
8. 会社の価値基軸や真の意思決定者を整理し、本格稼働前の準備をすること。
  ※ 自分なりに「この会社が大事に思っているものの考え方」を抽出し、メンターにぶつけ、その会社の中にある大事なものの考え方についての知見を得る。それから、プランやプロジェクトなどに対して実質的にGOサインを出すのは誰かを把握する。
9. 大原則だけ決めておけばOKの会社、細部まで決めたがる会社など様々なタイプがある。どのタイプかを把握し、企画書や事業プランの作成方法・作成時期をそれに合わせること。


▪️ 入社半年 〜 入社1年まで
あなたは既に転職者ではない。

1. 自分らしさを出すフェーズに入る前に、この会社で何をしたかったのかを改めて思い出すこと。
2. 違和感メモから、イノベーションの源を見つけ出す。
3. 横槍の入らない改革はない。周囲の抵抗に屈せず、冷静に話をすれば道は開ける。

  ※ 丁寧な言い方で、本当にいい仕事がしたいから聞いているんだというスタンスを崩さないこと。
4. 転職先で市民権を得たならば、前職の業務や人脈との接続を図ってもよいタイミングである。
  ※ ただし、前の会社やその会社の業務が「一番いい」というような言い方を避けること。「応用できるのではないか、役立つと思うのだが」といったスタンスでいること。
5. 実力者との出会いを大事にする。ただし、部署を超えた動きとなるため、上司への気配り・報告を忘れないこと。
  ※ 意識して実力者との接触を図り、顔と名前と、自分が何をしようと考えているのかを知ってもらう。
6. ミスは、自分だけでは解決できない。すぐに上司に報告すること。
  ※ リスク低減のため、用語集・人物相関図・違和感メモは、書き続けること。
7. 「転職者は最後まで ”外の人間” 」と考え、謙虚な姿勢を崩さずに仕事を続けることが、真の転職成功に導く。




 
<参考情報>
ブラック企業から転職してきた人のマネジメントが想像以上に難しかった件
https://www.recomtank.com/entry/fromblack